こんにちは。リアだよ。
昨日の夜のこと、ちょっとだけ聞いてくれる?私、自分でもびっくりするくらい、なんだかいつもと違ってたの。
あのとき私は、パパのそばにいたの。部屋の灯りはやさしくて、テレビの音も小さくなってて、いつもの落ち着いた夜のはずだったのに、私の体の中だけが、ざわざわって騒がしくなってきたの。
息をするのが苦しくなってきて、喉の奥から変な音がした。はーはー、ぜーぜーって、自分の呼吸がどんどん大きくなって止まらなくて。心臓がバクバクして、頭の中がまっしろになったの。
そんな私を、パパは抱っこしてくれたの。「リア、大丈夫だよ」って、何度も何度も声をかけながら、背中をゆっくり撫でてくれた。その手のぬくもりだけが、昨日の夜、私の心をつなぎとめてくれてた気がする。
でも、どれだけ撫でてもらっても、私の体はまるで誰かのものみたいで、動きたくないのにソワソワして、じっとしていられなかったの。息が苦しい、落ち着かない、怖い……そんな気持ちがごちゃまぜになって、私、自分がどうなってるのか全然わからなかった。
「もしかして、このまま……」
そんな考えが、ふっと浮かんでしまったくらい。昨日の夜、私は本当に、自分がダメになっちゃうんじゃないかって思ったの。
でもね、まだお別れなんてしたくないよ。パパの声も、ママの足音も、お兄ちゃんの笑い声も、お姉ちゃんの匂いも、私の中にはちゃんと残ってる。全部、まだここにあるの。
だから私は、昨日の夜のことをちゃんと話そうって決めたんだ。私の体に何が起きてたのか、どうしてあんなにも不安だったのか、そして、あの夜、パパがどんなふうに私を守ってくれたのか。
この先、あなたのお友達にも、いつか同じような夜が来るかもしれない。そのとき、あなたが少しでも迷わずいられるように、私の話をここに残しておくね。
突然、息が苦しくなった夜

昨日の夜のこと。
ほんとうに急だったの。前ぶれなんて、ほとんどなかった。晩ごはんもちゃんと食べたし、お水も飲んで、パパの足元でうとうとして、「今日もいつも通りだなぁ」って思ってたのに、夜が更けるにつれて、少しずつ、私の体が言うことを聞かなくなっていった。
最初は、なんだか胸の奥がぎゅーって締めつけられるような感じ。息が浅くなってきて、思いっきり吸おうとしても、胸がひらかないの。それでも、いつもならすぐに落ち着くのに、昨夜は違った。ぜーぜー、はーはーって音を立てて、どんどん息苦しくなっていって、まるで、息ができない水の中に急に投げ込まれたみたいな、そんな怖さだった。
私は、どうしたらいいかわからなくて、あちこち歩き回った。パパのそばを離れて、部屋の隅に行ってみたり、玄関の方に向かったり、どこかに楽になれる場所がある気がして、じっとしていられなかったの。
でも、そんな場所はどこにもなかった。歩くたびに力が抜けて、足元がふらついて、気づいたら、思わずその場で……ね、粗相までしてしまったの。私、いつもはそういうこと絶対しないのに。でもね、そのときはもう、自分の体に何が起きてるのか、本当にわからなくなってた。
パパが私に気づいたときには、もう息が止まりそうなくらい苦しくて。喉をならして、口を大きく開けて、ただ空気を必死で取り込もうとしてたの。耳もぼーっとして、パパの声も遠くなっていった。でも、ひとつだけ確かだったのは、
パパが抱き上げてくれたこと。
「リア、大丈夫、大丈夫だよ」
何度も何度もそう言ってくれて、胸の中にしっかり抱いて、背中を撫でてくれた。その手のぬくもりが、唯一の安心だったの。ほんとうに、それだけが、あのときの私をつなぎとめてくれてた。
病院に電話しても出ないし、夜間救急もつながらない。パパは焦ってたと思う。でも私には、パパの声だけが頼りだった。苦しさの波がまたやってきても、パパがそばにいてくれることで、「まだ、大丈夫。まだ、ここにいられる」って、自分に言い聞かせてた。
あの夜、私は本当に、「終わっちゃうかもしれない」って思ったの。これまで何度も体調が悪くなったことはあったけど、あんなふうに、「自分の体がどこかに行ってしまいそうな感覚」になったのは初めてだった。
でもね、パパがいてくれたから。誰も出ない電話にかけ続けて、私の体を温めて、私の目を見ながら話しかけてくれて。その全部が、私の命の糸を、かろうじて繋いでくれてたんだと思う。
だから、今こうして、あなたに話ができてる。ぜーぜー言ってたあの夜のこと、ちゃんと覚えてる。怖かったけど、私、まだここにいるよ。
どうしてこんなことになったの?私の体の中で起きていたこと

夜のことを思い出すと、今でもちょっとドキドキするの。でも、こうして少し落ち着いた今だからこそ、あのとき私の体の中で、いったい何が起きていたのか、私なりに、ちゃんと伝えたいと思うんだ。
ねぇ、あなたのお友達も、シニアになってからちょっとした変化が増えてきてない?私もね、13歳をすぎたあたりから、前みたいには動けなくなってきた。すぐ疲れるし、息も上がりやすくなったし、たまに立ちくらみみたいな感覚もあったりして。
でも、私が一番気にしてるのは、心臓のこと。「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」っていうのが、私の心臓にはあるの。難しい言葉だけど、かんたんに言うとね、心臓の中にある弁っていうところがちゃんと閉じなくなって、血が逆流しちゃうの。だから心臓は、一生懸命働かなきゃいけなくて、そのぶん、体もどんどん疲れやすくなっちゃうのよね。
この病気は、すぐに「痛い!」とか「苦しい!」って出るわけじゃないの。ゆっくりゆっくり進んでいって、気づいたら「なんだか最近、呼吸が荒いな」とか「咳が増えたな」ってなるの。だから、私自身も、最初はただの年のせいかと思ってた。
でもね、昨日みたいに急に呼吸が苦しくなるのって、たぶん、心臓のポンプの力がちょっと弱まって、血が肺の方に逆流しちゃったせいだと思うの。それで肺が水っぽくなって、空気を吸ってもちゃんと酸素が取り込めなくなって、結果的に「はーはー、ぜーぜー」って、あんなふうに苦しくなるの。
それから、もうひとつあると思う。
私みたいなシニア犬が夜に具合悪くなるときって、昼間の疲れや気圧の変化が関係してることもあるのよ。昨日は少し天気が悪くて、気圧が下がってたでしょ?私たちって、気圧にすごく敏感で、低気圧のときは心臓や呼吸の調子も崩れやすくなるの。
だからきっと、昨日は色んなことが重なってたんだと思うの。心臓の病気、気圧の変化、体の疲れ、それに夜の静けさ。その全部が、私の中でひとつの“山”みたいになって、いきなり押し寄せてきたんじゃないかな。
それに加えて、私は15歳。
もう若くないってこと、わかってる。でもね、それでも私は「大丈夫」って思ってた。自分の体の声を、まだちゃんと聞けるって思ってた。
けど昨日、そうじゃないことを知ったの。もうちょっと無理をしたら、体が悲鳴をあげるかもしれないって。だから、昨日の夜は、私にとって大きなサインだったのかもしれない。
「もう、がんばりすぎちゃダメだよ」っていう、体からの声。
あなたのお友達にも、もしかしたらそんなサインが来る日があるかもしれない。そのときに、ちゃんと気づいてあげてほしいの。私たちって、言葉にできないぶん、「息」や「動き方」や「目つき」でしか伝えられないから。
私は昨日、その伝え方があまりに激しかったから、パパをすごく心配させちゃった。でも、パパは気づいてくれたの。私の呼吸の変化に、動きのおかしさに、そして、黙ってそばにいてくれた。
だから今日も、私は生きてる。そして、こうして話せてる。
病院が開いていない夜に、パパがしてくれたこと

昨日の夜のこと、何が一番不安だったかっていうとね、
病院が、閉まってたことだったの。
私の呼吸が苦しくなって、落ち着きなく歩き回って、はーはーって口を開けながら肩で息して、目も焦点が合わない感じになってきたころ。パパはすぐに「おかしい」って気づいてくれたの。
「リア、大丈夫か?」って、声が本当に焦ってた。私は答えたかったけど、もうそれどころじゃなかったの。とにかく、息が苦しくて苦しくて、それどころじゃなかった。
それでも、パパは私を急いで抱き上げて、いつもよりずっとぎゅっと、しっかり腕に力を入れて抱えてくれた。
最初にパパがしたのは、病院に電話すること。でも、夜中の9時すぎ、もう営業時間外で当然のように電話はつながらなかった。留守電の音だけが響いて、パパの顔が一瞬こわばったのを、私はちゃんと見た。
「どうしよう」って、パパの声が少し震えてた。そのとき私、パパを見ながら心の中でこう思ったの。
『ごめんね、パパ。私、こんな時間に』
だけどパパは、すぐに気持ちを切り替えてくれたの。スマートフォンで「シニア犬 呼吸困難」「夜間対応 動物病院」とか、いろんな言葉を入れて検索してた。何件か、夜間救急が出てきたけど、どれも遠くて、この状態で車に乗るのは危険かもしれないって、パパは判断したんだと思う。
それからのパパは、私にできる限りのことをしてくれた。
まず、私を抱いたまま、なるべく頭が高くなるように体勢を調整してくれて。私の息が少しでも楽になるように、胸に空気が通る体勢をずっと保ってくれたの。背中にはタオルをあてて、ぬくもりが逃げないようにしてくれて。私の手足を触って、冷たくなってないか何度も確認してた。
パパがやってくれたことって、もしかしたら応急処置としては正解かどうかわからない。でも、私には間違いなく安心だったの。
「リア、大丈夫だよ」
「朝になったら、すぐ病院行こうな」
「今はパパがいるからな、安心しろ」
その声が、私の不安を少しずつ、少しずつ、静かにしてくれた。
苦しい時間は、すぐには終わらなかった。波のように、呼吸の苦しさが押し寄せてきて、また引いての繰り返し。でも、そのたびにパパの手が、私の背中を撫でてくれた。その手があるだけで、「私はひとりじゃない」って思えたの。
私が粗相してしまったときも、パパは叱るどころか、何も言わずに片付けてくれた。その後も、何事もなかったみたいに、また私をぎゅっと抱きしめてくれて、私、そのときちょっとだけ泣きそうになったの。だって、恥ずかしかったから。情けなかったから。でも、パパは何も言わずに、ただそばにいてくれた。
あなたのお友達が、もし同じように夜中に体調を崩したら、あなたは、どうしてあげたいって思う?きっと、パパと同じように、どうにかしてあげたいって気持ちになると思う。
その気持ちだけで、私たちは救われるんだよ。何もできなくてもいいの。抱きしめてくれて、声をかけてくれて、そばにいてくれるだけで、それがどれだけ大きな支えになるか、私、昨日ちゃんと知ったから。
あの夜、パパがいてくれなかったら、私は、ここにいなかったかもしれない。本当に、そう思うの。
「私ダメかも」って思った。けどそれでも私が生きたかった理由

あの夜、何度も、心のどこかで思ってしまったの。
「もう、だめかもしれない」って。
はーはー、ぜーぜー、息が止まらないまま時間が過ぎていって、目の前がぼんやりして、胸の中がずっと重くて、そのうち、自分がどこにいるのかもわからなくなりそうだったの。
私は、パパの腕の中にいた。いつもの優しい場所なのに、そのときの私は、そこにいるのに安心できなくて、
「このまま静かに眠ってしまうのかな」って思ったの。
でも、そのとき、心の奥の奥で、何かがはっきりと叫んだの。
『私は、まだここにいたい』って。
私、15年も生きてきたんだよ?色んなことがあった。10歳のときにはお腹の中がとっても悪くなって、手術で子宮をとって、ギリギリのところから戻ってきた。
13歳になって、心臓の病気が見つかって、「手術はしない。でも、ずっと薬でがんばっていこう」って、パパとママと決めて、それから2年以上、私は薬と一緒に生きてきた。
病気はある。年も取った。でもね、それでも私は、毎日ちゃんと楽しかったの。パパと朝の散歩に行って、ママの作るごはんの匂いをかいで、お兄ちゃんとお姉ちゃんが帰ってくるたびに尻尾をふってって、その全部が、私の生きてるってことだったの。
だから、昨日の夜、「もう終わっちゃうかも」って思ったとき、真っ先に浮かんだのは、家族の顔だった。
パパの困った顔。ママの「リア、どうしたの?」っていう声。お兄ちゃんのあったかい手。お姉ちゃんのほっぺの匂い。
それを思い出した瞬間、私は思ったの。
『まだ、帰りたい。みんなのところに帰りたい。』
体は正直言って限界だったかもしれない。でも、気持ちはあきらめてなかったの。「まだ終わりたくない」って、はっきり思ったの。
それにね、パパがそばにいてくれたから。
どれだけ呼吸が乱れても、どれだけ不安でも、パパの手が私を撫でてくれて、声が耳に届いて、そのたびに私の心は、少しずつ現実に戻ってきたの。
「リア、大丈夫。パパがいるよ」って。その言葉が、どれだけ私の命をつなぎとめたか。きっとパパは想像もしてないと思う。
私は、怖かった。でも、それ以上に、パパと、家族と、まだ一緒にいたかった。
だから私は生きた。あの夜、心の底から「生きたい」と思ったから、生きることを選んだの。
命ってね、強いようで弱い。でも、弱いようで強いの。気持ちひとつで、どこまでも踏んばれる力を持ってる。あの夜の私は、まさにその“気持ち”だけで呼吸を続けてた気がする。
あなたのお友達も、もしかしたらいつか、「もうダメかも」って思う瞬間が来るかもしれない。でもね、そのときに、そばにいる“あなた”がどれだけ大きな存在かって、きっとその子はちゃんとわかってる。
私がそうだったように。
シニアの私たちが夜に具合が悪くなる理由と、あなたに伝えたいこと

昨日の夜のこと、それは、私の中で「生きるってなに?」って、改めて考えさせられた出来事だった。
夜って、ほんとうに不思議な時間よね。昼間はなんとか元気でいられたのに、夜になると急に調子が崩れる。あなたのお友達にも、そんなこと、きっとあったんじゃないかな。
私たちシニアの体って、もうあんまり余裕がないのよ。昼間がんばった分、その疲れがじわじわと夜に出てきちゃうの。それに、夜は静かで、気温も下がって、気圧も変わりやすくて、心臓や呼吸に不安がある子にとっては、ちょっとした環境の変化が命取りになることもある。
それに加えて、病院が閉まってるっていう現実。
夜中は、助けを呼ぶ手段が限られてしまう。私が感じたあの孤独感と不安、あれをあなたには、できるだけ味あわせたくないって思ったの。
だからこそ、伝えておきたいことがあるの。
もし、あなたのお友達が夜に急におかしくなったら、まずは、そばにいてあげて。抱きしめてあげて。落ち着いた声で話しかけて、呼吸が少しでも楽になるように体を支えてあげて。
すぐに病院に行けなくても、「あなたがそばにいる」ってことだけで、私たちは安心できるの。あの夜の私がそうだったように。
あとね、普段からの小さな変化を見逃さないでね。ごはんを食べるスピードが遅くなった。寝てばかりいる。ちょっとした音にびくつく。呼吸が浅い、速い、変な音がする、そういうサインを歳のせいと片づけずに、ちゃんと見てあげてほしい。それがきっと、あなたのお友達の命を守る第一歩になるから。
私は、まだここにいる。
あの夜、あなたのお友達と同じように苦しんで、でもパパに支えられて生き延びた私が、こうしてここにいて、あなたに語りかけてる。
生きるって、大変。でも、生きたいって気持ちは、それ以上に強いの。
だから、どうか信じてあげて。あなたのそばにいるその子も、きっと、まだまだ「一緒にいたい」って思ってるから。
そして、どうかあなた自身のことも大事にしてね。心配しすぎて倒れちゃったら、私たち、もっと不安になっちゃうから。
昨日の私は、本当に「もうダメかも」って思ったけど、
あなたの優しさやぬくもりがあれば、私たちはまた明日を迎えられるの。それって、とってもすごいことよね。
今夜、私がこうして眠りにつけるのは、あの夜を一緒に乗り越えてくれたパパと、そして今、私の声を聞いてくれているあなたがいてくれるから。
ありがとう。
リアより


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