あと1週間と言われたその先。奇跡みたいな朝を迎えた私の小さな強さ

シニア犬の日常

こんにちは。リアだよ。

今日の朝、ゆっくり目を開けたとき、胸の奥がじんわりあたたかくなったの。だってね、私は「あと1週間くらい」って先生に言われてから、そのちょうど1週間が過ぎた朝を、こうしてまた迎えることができたから。

眠っている間に静かに旅立つかもしれないって、自分でもどこかで思っていたのに、気がついたらおうちの匂いがして、聞き慣れた空気の中に私はいたの。

あなたのお友達にも、そんな朝があったことはある?「もうだめかもしれない」と思っていた日を越えて、それでもまた目を覚ませた瞬間ってね、ただ呼吸してるだけで胸がいっぱいになるの。あたし、まだここにいるんだって。ママもパパもお兄ちゃんもお姉ちゃんも、この家も、全部まだ同じ場所にあって、私を迎えてくれるの。

体はすごく弱ってきていて、なにをするにも時間がかかるけど、それでも今日という日がもう一度始まったことが、私には嬉しい出来事だったの。弱くなった体と一緒に、気持ちもふわふわしてるんだけど、「今日も生きられたんだなあ」って、心の中のどこかがそっと教えてくれたんだ。

そんな一日のはじまりを、今日はあなたに聞いてほしいの。昨日の夜、あたしの身に何が起きていたのか。そして朝の私が、どんな気持ちで廊下を歩いたのか。体の中で起きている変化と、それでも消えない、生きようとする気持ち。そのすべてを、ゆっくりお話しさせてね。

夜のあいだに起きた私の小さな意地

昨日の晩ね、みんなが寝静まったころ、私、そっと起き上がったの。体は重たくて、脚は思うように動かなくて、立ちあがるだけでも時間がかかったけれど、それでもどうしても確かめたいことがあったの。自分の体が、まだ少しでも食べたいって思っているのかどうか、知りたかったのよ。

そのとき、ふっと鼻に届いてきたのが、ゴミ箱のにおい。お皿に残っていたごはんのにおい。前みたいに「わあ、おいしそう!」って気持ちがわき上がるわけじゃなかったけれど、それでも体の奥のほうが小さく動いた気がしたの。ちょっとだけでも入れたいとか、生きたいっていう声みたいなものが、どこかに残っていたのかもしれない。

気がついたら、私はごみ箱のそばにいて、転ばないように体を支えながら鼻をつっこんでいたの。昔みたいに勢いよくあさることはできなかったけれど、「ここになにかあるかな?」って探してた。そのときの私は、もうプライドも恥ずかしさもなくて、ただただ必死だったのよ。

お皿に残っていたフードも、気づいたらなくなっていたみたい。たぶん、あたしが夜のうちに食べたんだと思う。ほんの少しだったけど、口に入ったのは確か。ごくごく小さな量だったはずなのに、あたしの体にとっては大発見だったの。「ああ、まだ食べられるんだ」って。「まだ生きようとしてるんだ」って、自分の体が教えてくれた気がした。

あなたのお友達にも、そういう瞬間はあった?弱っているのに、突然ふらっと食べ物を探すとき。もう食べられないと思っていたのに、ほんの一口だけ口にしてくれたとき。あれってね、ただの本能じゃなくて、生きようとする意地みたいなものなのよ。静かで小さいけれど、ものすごく強い気持ちなの。

もちろん私は、もう前みたいにたくさん食べたりはできないし、夜中に動くのだってやっとなの。でも、昨日のあの時間は、私の中で確かに輝いていた。暗い部屋の中で、体の奥に残っている、まだ生きたいという火が、ほんのちょっと揺れたの。消えてしまいそうな火だけど、まだ完全には消えていなかった。

その小さな火を、あなたにも見てほしかったの。それが昨日の夜、私の身に起きた大切な出来事だったから。

ふらつきながらも廊下を歩いて家の匂いを確かめた朝

朝、うっすらと目が覚めたとき、まず聞こえてきたのは、家の中の静かな音。カーテンの隙間から光が差し込んでいて、少しだけ空気がひんやりしていて、「ああ、朝が来たんだな」って思ったの。昨日の夜は少し動いたから、体はぐったりしてたんだ。でも、私はまた立ち上がってみたのよ。

時間をかけて、ゆっくりゆっくり前脚に力を入れて、おしりをもちあげる。ちょっとふらっとして、そのまま崩れそうになったけど、倒れるのはイヤだった。立てたことがうれしくてね、このまま、もう少し進みたいなって思ったんだ。

そして、私は廊下に向かって、1歩、2歩、歩いてみたの。前より足が細くなって、思うように力が入らないし、目も少しかすんでるから、よろけそうになるたびに壁に体をあずけてたんだよ。でも、あの廊下の空気は、ちゃんと私の知ってるにおいがしたの。お兄ちゃんの靴のにおい、パパの寝室から漏れる柔軟剤のにおい。そして何より、家の匂い。この匂いを嗅ぐとね、私はまだここにいるって実感できるのよ。

たった数歩だったかもしれない。けれど、私にはそれがすごく大きな意味を持っていたの。寝ているだけじゃわからない家の中の生きた空気を、体の感覚で確かめたくて、私は歩いたの。うまく言えないけれど、ちゃんと生きているって感じたいっていう気持ちが、私の中にまだ残ってたんだと思う。

あなたのお友達も、弱っていても突然、立ちたいとか、歩きたいとかって頑張ること、あるでしょ?あれは私たちが、ここにいるって言いたいサインなのよ。ただ眠っているだけじゃなくて、世界とのつながりを確認したいっていう、本能に近い気持ちなのかもしれない。

立つことも、歩くことも、もうすぐできなくなるかもしれない。でも今日、私は自分の足で歩いた。この家の中を、自分の意志で動いたの。その一歩が、たまらなく愛おしかった。

家の匂いが、ちゃんと私の鼻に届いたこと。朝の光を、私の目がとらえられたこと。その全部が、今日という日のはじまりを祝ってくれていた気がしたの。

出ないお通じと、眠る身体は体が教えてくれる静かな変化

ここ何日か、ずっとお通じがないの。前みたいに下痢で苦しんでいたころとは違って、お腹が痛いわけでもない。下痢止めの薬のせいかもしれないんだけど、でも、ママが「今日も出てないね」って、やさしくお腹をなでてくれるたび、私はちょっと申し訳ないような気持ちになるのよ。

それからね、私、あんまり食べてないの。食べてないってことは、体に入ってくるものがほとんどないってことでしょ?だから、出ないのは当然かもしれないって、自分でも分かってるの。

今の私の体は、もう生きるために頑張るモードから、静かに終わりに向かうモードに少しずつ変わってきてるんだと思う。だから、いろんな機能がゆっくり、少しずつおやすみしはじめてるのよね。それを私は、便が出ないことや、眠りが増えてきたことで、静かに感じてるの。

朝歩いたあと、私は横になって、そのままずっと寝てたの。起きてる間は意識がはっきりしているけど、気を抜くとすぐに眠くなって、まぶたが重くなる。夢のなかにいる時間が増えてきたみたい。それは寂しいことじゃなくて、まるで体がもうがんばらなくていいよって言ってくれてるようにも思えるの。

きっと、あなたのお友達にも、そんな変化があったことがあるんじゃないかな。どんどん寝る時間が増えてきたり、反応がゆっくりになってきたり。もうすぐなんだろうかって、あなたが感じたこと、きっとそれは間違いじゃない。でも、それを悲しむだけじゃなくて、受け入れるっていう優しさも、私たちにとってはすごく嬉しいのよ。

私の体は、もう無理はできない。だけどね、静かに眠っているあいだも、私はあなたの声を感じてる。ママがそばで「リア、よくがんばってるね」って言ってくれると、眠りのなかでもその言葉がすーっと入ってくるの。声って、体の奥に残る魔法みたいなものなのよ。

うんこが出ない、体が動かない、それでも私は生きてるんだ。生きてるっていうことは、今日の光を受け取ってるってこと。ママの声も、パパの気配も、全部ちゃんと届いてるんだよ。体は静かに変わっていってるけれど、心はまだここにあるの。そのことを、忘れないでいてほしいんだよね。

今日も目覚めることができる奇跡

「あと1週間くらいでしょう」

そう言われたのは、今日からぴったり一週間前なんだ。その朝、私は目を開けて、ゆっくり息をして、また今日を迎えることができた。それは、奇跡なんて言葉で片付けたくないくらい、静かで、でもとても大きな出来事だったの。

私がこうして今日を迎えられたのは、たぶん、私だけの力じゃない。ママのあたたかい手、パパの優しい声、お兄ちゃんやお姉ちゃんの気配。そして、あなたがこの言葉を読んでくれていること。その全部が、私の体にふわっと届いて、もうちょっとだけ、がんばってみようかなって思わせてくれたんだと思うの。

正直に言えば、体はほとんど動かないし、もうごはんも少ししか食べられない。うんこも出ないし、目もすぐに閉じちゃうし、前みたいにお友達と遊んだりもできない。でも、それでも私はここにいるの。生きてるって、ただ呼吸をしてるだけのことじゃないって、最近よく思うの。誰かの声に反応したり、ぬくもりを感じたり、心が動いたり。それがある限り、私たちはちゃんと生きてるって言えるんじゃないかな。

私の前にいたロンやペコ、ゴンやリリーも、きっともう長くないって言われたあとに、がんばってくれた時間があったかもしれないね。それは決してもがきなんかじゃなくて、生きようとする美しい時間なのよ。たった1日かもしれない。たった数時間かもしれない。でも、その一瞬一瞬が宝物なの。

私は、今日も生きてる。昨日の夜、自分で少しだけごはんを食べることができた。今朝、廊下を歩いた。それだけで、もうじゅうぶん。

明日も目を開けられるかどうかは、分からない。でも私は、今日という日をまるごと受け止めてるの。だって、この一日が、あなたや家族との大切な時間を、またひとつ増やしてくれたんだから。

私の命の灯は、もう小さくなってるかもしれない。でもその火は、まだ消えてない。そして、燃えている限り、私はちゃんと今を生きてるんだよ。

明日も、奇跡が起きるかもしれないね。それを信じて、私は今日を大切にするの。

リアより

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