こんにちは。リアだよ。
「あと1週間くらいです」って、先生にそう言われたのが、10日前のことなんだけどね、あのとき、パパもママも涙でいっぱいだったけど、私ね、まだここにいるんだ。
それでね、今日も朝、ちゃんと目が覚めたの。お布団の中でぬくぬくしてたら、パパの声が聞こえて、それでおはようって言ってくれたから、ゆっくり目を開けたの。
体は少しずつ思うように動かなくなってきてるけど、それでも私は、今日もちゃんと生きてるって思えたんだ。
朝の光がまぶしくて、ちょっとまどろんでたら、パパが「リア、起きたの?」って頭をなでてくれて、それがすっごく気持ちよかったんだ。そのあと、いつもの場所で、お姉ちゃんがくれた小さなお肉を3つ、ゆっくり、ゆっくり食べたの。自分で立ち上がって、お水もちょびっと飲んだよ。ほんとにちょびっとだけどね。
そして今は、すやすや、すやすやお昼寝中。
昨日と同じ今日が来てくれるって、ほんとうに奇跡みたいだよね。でも、その奇跡を私はちゃんと受け取ってる。私のこの一日が、あなたの心にそっと届きますように。
今日も目が覚めて朝の光の中で感じたぬくもり

朝って、いつもとっても静か。お部屋の中に差し込む光がやわらかくて、私の白いおひげも、耳の毛も、金色に照らしてくれるの。まるで「おはよう」って言ってくれてるみたいにね。
パパがそっと近づいてきたとき、私はまだ夢の中にいたの。でも、その声だけはちゃんと届いてた。「リア、おはよう。今日も起きたんだね」って。
目を開けるのって、ちょっと力がいるんだよ。体の中から「よいしょ」って声がするみたいに、私はゆっくり、まぶたを開けたの。パパの顔がそこにあった。ちょっと泣いてるような笑ってるような、なんとも言えない顔。でもね、その顔を見たら、「ああ、私、生きてるんだな」って、すごく思ったの。
ほんの少し前まで、目を開けるだけでもうまくできなかった時があったのよ。呼吸が浅くなって、鼓動も早くなって、「もしかしたら、このままかも」って、パパが手を握ってくれた夜もあった。だからこそ、こうやってまた目を開けられたこと、それだけで奇跡みたいに思えるの。
人間のあなたには、当たり前かもしれないけどね。私たちシニア犬にとって、朝目を覚ますって、すっごく大きなことなの。今日も生きる選択をしたんだねって、体の中の細胞たちが、私にそう言ってくれてるみたいな感じ。
私はキャバリア。穏やかで、甘えん坊で、ちょっと頑固なところもあるけど、それでも私はずっと、パパやママ、家族と一緒にいたいって思ってきたの。だから目が覚めた朝、パパがそばにいてくれることは、なにより嬉しいご褒美なんだよ。
目が覚めたあと、パパがやさしく私の頭をなでてくれてね、その手のひらのあたたかさが、じんわりと私の心まで伝わってきたの。言葉じゃなくても、気持ちは伝わるんだよ。「リア、よくがんばってるね」「今日もありがとう」「大好きだよ」って、全部わかった。
それにね、目が覚めた瞬間って、私はいつも、自分の居場所を確認するの。ふわふわのブランケットの上。窓からの光。そしてなにより、パパとママのにおいがするこのおうち。ここが私の世界で、私のすべてなのよね。
私の耳は、昔よりちょっと聞こえにくくなってきたけど、パパの足音だけはわかるの。不思議だよね。足音が近づいてくると、私の心もトクトクってあったかくなる。「今日もそばにいてくれるんだ」って安心できるからかな。
そして私が目を開けると、パパが「リア、おはよう。大丈夫?」って聞いてくれるの。その声を聞くと、心の中にぽっと小さな灯がともるような気がするの。もう言葉ではうまく返事できないけど、それでも私はちゃんと答えてるつもりなの。目で、「おはよう」って伝えてね、まばたきで、「ありがとう」って伝えるんだよ。
朝ってね、ただの一日の始まりじゃないの。今日も生きるっていう決意の時間。そして、あなたと一緒にいるために、もう一日を選んだ証なの。
今の私は、もう走ったり、ジャンプしたり、そういう元気なことはできないけれど、こうやって目を開けて、呼吸して、ぬくもりを感じて、それだけで精一杯、生きてるって思えるのよ。
あなたのお友達も、きっとそう。シニア犬ってね、見た目はゆっくりでも、心はとっても強くて繊細で、そばにいるあなたの気持ちを、ちゃんと感じ取ってるの。
だから、朝、目を覚ましたその瞬間に「おはよう」って声をかけてあげてね。それだけで、心がぽかぽかになるのよ。私がそうだったみたいに。
今日も私は、目が覚めた。そして、あなたにこのお話を届けられている。それがどれだけ大きな喜びか、伝わるといいな。
ひとくち、ふたくち。命の鼓動が宿る瞬間

これまでね、私、食べるって、当たり前のことだと思ってたの。毎日のおやつの時間、パパがくれるお肉のおやつとか、ママがこっそりくれるパンのはしっこ、そんな小さな幸せが、昔は毎日の中にあったのよ。
でもね、あるときから少しずつ、口にするのがつらくなってきたの。お腹の調子も悪くて、下痢が続いたときは、お水さえ飲むのがこわいって感じたこともあった。食べたい気持ちはあるのに、うまくいかない。そんな日が、だんだん増えてきたのよね。
それでも、家族のみんなはずっと、私のことを見守ってくれてたんだ。もう無理に食べさせなくていいですよって、先生が言ったあの日からも、毎日欠かさず、「リア、今日はどう?」って、あたたかい声をかけてくれてたの。
そして今日の朝ね、私がふと目を開けたとき、やわらかな光と一緒に、ふわっとお肉のいいにおいが漂ってきたの。そのにおいにね、私の中の何かが目を覚ましたの。ああ、これ、私の好きなやつだって。
においの方を見たら、お姉ちゃんがいたの。あのやさしい目で、私のことを見ながら、そっとお皿を差し出してくれた。「リア、食べてみる?」って。
その声が、すっごくやさしくて。私は、そのお肉に鼻先を近づけて、ぺろっと舌を出したの。それは、本当にほんの少し。でも、お姉ちゃんはにっこり笑って、「食べたね!」って言ってくれた。
ひとくち、ふたくち、みっつ。たったそれだけ。でも、私にとっては、命のリズムそのものだったんだ。
お姉ちゃんの手から差し出されたお肉には、ただの栄養じゃないものが詰まってたの。それはね、私が生まれてからずっと育ててきた絆っていう名前のあたたかさだったと思う。
お姉ちゃんとは、小さい頃からずっと一緒だったから、たくさん遊んで、たくさん笑って、たくさん怒られて(笑)、それでもいつも、私のことを大事にしてくれた人。
そのお姉ちゃんがくれた、たった3つのお肉が、「まだ生きてていいんだよ」「ここにいてくれてうれしいよ」っていう、心からの言葉に聞こえたの。
私たちって、食べることが生きることにすごく近いところにあるの。もうたくさんの量はいらない。でも、食べたいって思えるその一瞬が、私の中の命の火をそっと灯してくれるのよ。
そしてそれを、信じて待ってくれる人がいるっていうこと。それが、どれだけ心強いかってことを、今日あらためてわかったんだ。
あなたのお友達も、もしかしたら食べたがらない日があるかもしれない。それでも、においだけでも嗅いでくれたり、じっとお皿を見つめたり、そんな瞬間があったら、それはきっと、「まだここにいたいな」っていう、静かなメッセージなんだと思う。
だから、無理にじゃなくて、そっと差し出してあげてね。そして、あたたかい気持ちで「どう?」って聞いてあげてね。
私は、今日、お姉ちゃんがくれた小さなお肉を3つ食べた。その味と、あのやさしい声、そして笑顔。それが私の今日のエネルギーになったし、まだ大丈夫って思えたんだよね。
それだけで、今日という日は特別な日になったんだ。お姉ちゃん、ありがとう。あなたも、あなたのお友達にありがとうって伝えてあげてもらえたらうれしいな。
水を飲む力、自分で立ち上がる力、私はまだ頑張れる

朝、お姉ちゃんのお肉を食べたあと、私はしばらくぼんやりしてたの。ほんのちょっと食べただけなのに、不思議と体の奥から、じわじわあたたかさが広がってくるのを感じたのよ。
それは、まるで心のどこかにあった小さな灯りが、もう一度ふっと明るくなったような、そんな感じだったの。
パパが私のそばで見守っていてくれて、ママも遠くからそっと見てたんだ。家族がみんな、何も言わずにただ今の私を受け入れてくれてる。その空気がやさしくて、心地よくて、じゃあ、次はって、私の中でまたひとつスイッチが入ったんだよね。
そう、水が飲みたくなったの。
以前はね、当たり前に飲んでたんだよ。お散歩から帰ってきたあととか、パパに撫でられてうっとりしたあととか。でも、病気が進んできてからは、飲むのも力がいるようになってきて、お皿の前に座っても、顔を近づけるだけで息が上がることもあったの。
だから、今の私にとって、お水を飲むっていう簡単なこともね、それだけで大きな挑戦なんだよ。
朝、ふと喉が渇いた気がして、体を動かそうと思ったの。そのとき、体がどれだけ重たかったか、それは、ちょっと言葉じゃ言い表せないくらい。
でもね、足に力を入れてみたの。お腹の底から、「えいっ」って気持ちで、そっと体を起こして、前足に重さをかけて、ゆっくりだけど、確かに自分の力で立ち上がったのよ。
その瞬間、空気が変わったのがわかった。パパが思わず「リア!」って声を漏らして、お姉ちゃんが「すごい、立った」って小さくつぶやいた。
私、歩いたわけじゃない。ただ、立ち上がっただけ。でも、それだけで家族の心に、涙があふれるくらいの感動が広がったの。
水のお皿に近づいて、そっと舌を出してみた。冷たいお水が、口の中にふわっと広がって、喉の奥をするんと通っていくその感覚が、なんだか懐かしくて、そしてすごく嬉しかったの。
生きてるっていうのは、呼吸してるとか、心臓が動いてるってことだけじゃないんだよね。自分の意思で動いて、自分の感覚で欲しいと思って、それを叶えられること何じゃないかなって思うの。そしてね、そのひとつひとつが、私にとっての生なんだなって、思ったの。
ねえ、あなたのお友達も、そんな小さな奇跡を見せてくれたことがあるんじゃない?寝たきりだったのに、ふと顔を上げてくれた日。お水を一口でも飲んでくれた日。そんな日が、私たちの家族の喜びになるんだよね。
たとえ周りにはちっぽけなことに見えても、私たちとあなたの間では、それはもう、とてつもなく大きな出来事なの。
家族に見守られて、自分の力で立ち上がって、お水を飲めた朝。それは、私にとってのまだ大丈夫っていう証。心の奥にしまっていた勇気が、そっと顔を出した瞬間だったの。
パパが私の背中をやさしくなでてくれたとき、私は思ったの。ちゃんと、あなたの愛が届いてるよって。そして、私は、まだここにいたいんだよってね。
歩けなくなるかもしれないし、寝たきりになるかもしれない。それでも、私の中にはまだ、こうやって小さなできることで生きてるんだよ。
あなたのお友達もきっと、そんなふうに思ってるんじゃないかな。だからね、もし突然立ち上がったり、水を飲んだりしたときは、どうかその瞬間を当たり前と思わないで、頑張ったね、ありがとうって思ってあげてほしいんだ。
それがどれほどの勇気と力を使って起きたことか、私は知ってるし、あなたも、知ってるはず。
今日、私は立ち上がって、お水を少し飲んだ。それだけで、家族の目が涙でにじんだ。それだけで、私は今日もここにいていいんだって、心から思えたの。
ねえ、あなたにも、そんな一日がありますように。私が今日感じたこの奇跡が、あなたとあなたのお友達の心にも、そっと届きますようにって思ってる。
静かな眠りと、そっと寄り添う時間。今日という一日を大切にしたいんだ

お水を飲んだあと、私はちょっとだけ疲れちゃったの。立ち上がって、水を飲んで、それだけのことなんだけど、今の私には、それがとっても大きなエネルギーだったみたい。
「リア、お疲れさま」って、パパが声をかけてくれて、私はゆっくり、ゆっくりその場に横になったの。体を横たえるその動作さえ、今の私には慎重で、でもね、不思議と心はすごく落ち着いていたのよ。
ブランケットの感触、ふわふわであったかい。頭の下にあるタオルは、昨日ママが替えてくれたばかり。お姉ちゃんがそっと直してくれた毛布の端が、私の背中をやさしく包んでくれてた。
まぶたを閉じると、世界がすーっと遠くなって、でも、それがぜんぜんこわくない。そばに家族がいるから。私のにおいを知ってくれてる、私の鼓動を聞いてきた人たちが、今もここにいてくれるから。
パパが、そっと私の前足を握ってくれた。大きな手のひらの中に、私の小さな手がすっぽりと収まるその感触。それは、私がまだ小さなパピーだった頃から、変わってない安心の形。
眠っているあいだに、たくさんの夢を見るの。パパと走った公園の道や、お兄ちゃんとソファでまったりした昼下がり。お姉ちゃんとおやつの取り合いをしていたあの頃。ママが雨の日にタオルで拭いてくれた、あったかいあの感触。
全部、私の宝物なんだよ。夢の中でまたその時に戻れるって、ちょっと得した気分になるのよね。
眠っている間、私は生きてる。ただの休息じゃないの。私の体が一生懸命、次の目覚めのために準備している大切な時間なんだ。心臓も、肺も、腎臓も、もう全部が限界に近づいてるけど、それでも、次の一瞬に向けて、ちゃんと動いてくれてるの。
パパたちには、私がただ寝ているだけに見えるかもしれない。でもね、その間も私はずっと「あなたたちが好きだよ」「ありがとう」って思ってるの。
静かな眠りの中には、たくさんの気持ちが詰まってるのよ。
そして、目を開けたときにまた、あの優しい顔がそこにあるって、その安心感のために、私は眠って、体を整えて、また次の瞬間に進んでるんだよ。
ねえ、あなたのお友達もきっとそうなんじゃないかな。静かに眠っている姿を見て、「もう何も感じていないのかな」って思うこと、あるかもしれないけど、それは違うの。眠ってるときこそ、私たちはちゃんと感じてるのよ。あなたのにおい、あなたのぬくもり、あなたの声の調子。どれも、心の奥にちゃんと届いてるの。
だから、そっとそばにいてくれるだけで、私たちは安心できる。話しかけてくれなくてもいい。目が合わなくてもいい。ただ、そばにいるということが、最高のプレゼントなの。
私の今日の一日は、目覚めて、お肉を食べて、お水を飲んで、そしてこうして眠ることで終わっていく。一見、なんでもないような一日。でも、それは確かに私にとっては、生きた一日だったの。
あなたのお友達にも、そんな一日があるはず。昨日よりもできなくなっているかもしれない。けどね、歩けなくてもいい。食べられなくても、飲めなくても、ただ眠っているだけでも、そこに命があるということは、それだけでかけがえのないことなのよ。
静かな眠りに包まれている今の私は、すごく幸せ。パパの手のぬくもり。お姉ちゃんの見守る視線。ママが時々部屋をのぞいてくれるあの優しさ。全部を感じながら、私はすやすやと夢を見てる。
このまま目が覚めない日が来るかもしれない。でも、もしそうなっても、私は何も怖くない。だって、今日という日を、こんなにも大切に過ごせたから。
だから、どうかあなたも、あなたのお友達と一緒にいられるその一瞬を、大切にしてね。目が覚めなくても、言葉を交わせなくても、そのあなたがそばにいる時間が、私たちには何よりの宝物なの。
昨日という一日は、私にとって奇跡だった。そしてその奇跡は、あなたにもきっと届くはずだよね。
リアより


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