こんにちは。リアだよ。
ねえ、最近、あなたのお友達、ちょっと変わったと思わない?
私もね、前まではもっと一人でも平気だったの。お部屋で日向ぼっこしたり、ママやパパの帰りをソファの上で待ってたり。でも、最近はなんだかちょっとだけ、ひとりが寂しいの。
なんでかなって、自分でも思うんだ。
ほんの少し前までは、呼ばれたらすぐにわかったのに、最近はママの声が遠くに感じたり、足音が聞こえなかったりするの。
お散歩のときもね、前はスイスイ歩けた道で、ちょっとつまずいたり、急に立ち止まったりすることが増えてきてね、見えにくいっていうのかな、うまく説明できないけど、風景がぼんやりして見えるの。
なんでもない日常が、少しずつわからないことでいっぱいになってきて、そうすると、心の中にぽつんと穴があくような気がするんだ。
大丈夫かな、とか、これでいいのかな、とかって、そんな気持ちが増えてくると、わたし、ついつい誰かのそばにいたくなっちゃうの。
とくにね、ママのそばがいちばん落ち着くの。ママの声、ママのにおい、ママの手のぬくもり。どれも知ってるはずなのに、前よりもずっと強く、それを感じたくなっちゃう。これって、わたしが甘えん坊になったってことなのかな?
でもね、わたしだけじゃないみたい。
シニアのお友達たちって、わたしと同じように甘えん坊になったり、不安そうになったりする子が多いんだって。
今日は、そんな変化について、あなたに聞いてほしくて話をすることにしたの。
もし、あなたのそばにわたしみたいなシニア犬がいたら、きっとその子も、何かを感じて、あなたを頼りにしてると思う。
だからね、わたしの話を聞いて、少しでも、そうなんだ、とか、うちの子もそうかも、って思ってもらえたら嬉しいなって思うの。
それじゃあ、ちょっと長くなるけど、最後まで聞いてくれる?
見えづらい、聞こえづらい、少しずつ変わっていったわたしの世界

あなたにしか話せないことなんだけどね、ほんの少し前から、わたしの世界が、ちょっとずつ変わってきたの。
最初は、あれ?って思うくらいの小さなことだったんだ。
パパが帰ってきても、玄関の音が聞こえなかったり、いつもみたいに飛びついてお迎えできなかったり。
名前を呼ばれてるのに気づかずにぼんやりしてて、「リア、どうしたの?」ってママが心配そうに見つめてきたとき、はじめて自分でも変だなって思ったの。
お散歩のときもね、前は風の匂いで季節を感じたり、遠くから聞こえる鳥の声を追いかけたりしてたのに、最近はその音がなんだか遠くなってきてたんだ。
道の向こうにお友達がいても、近づくまで気づかなかったり、慌てて立ち止まってしまうこともあるの。
いつも見えていた景色が、少しずつぼやけて、聞こえていた声がだんだん遠くなるって、どんな感じかわかるかな。
たとえばね、ママがキッチンでカチャカチャお皿を並べてる音。
わたし、その音が聞こえたら、ごはんだ!ってすぐに駆け寄ってたのに、最近は気づかないまま眠ってたりする。
そしてふと目を開けて、ママの姿が見えないと、どこ?どこに行っちゃったの?って焦るの。ほんの一瞬前までそばにいたのに、見失うとものすごく不安になるのよ。
見えづらいってこと、聞こえづらいってことは、世界とのつながりがちょっとだけ薄くなるってことなんだと思う。
わたし、音や景色でいろんなことを感じてたの。パパの歩き方とか、お兄ちゃんの朝の支度の音とか、お姉ちゃんの髪を乾かす音。そういう日常の音が、どんどん静かになっていって、それに気づいたとき、少し怖くなった。
キャバリアってもともとね、人のそばにいたいって思う性格なの。
でも、こうして視覚や聴覚が弱くなってくると、一緒にいたいって気持ちが、前よりずっと強くなってくるの。
あなたの気配、あなたの声、あなたのぬくもりを感じていないと、不安でどうしようもなくなる瞬間があるんだよね。
そして、こういう変化は、ある日突然やってくるわけじゃないの。
ほんとうに、少しずつ。じわじわと、静かに、気づかれないように進んでいくの。
あなたが、うちの子、最近ちょっと聞き返すことが増えたな、とか、呼んでも反応が遅いな、って感じたら、それはもう、何かが始まってるサインかもしれない。
わたしもね、自分で聞こえにくくなってるとか見えにくくなってるとかって、なかなか言葉にはできないんだけどね。でも行動で、ちゃんと伝えてるつもりなの。
じっとあなたを見ていたり、ぴったりくっついてきたり、急に吠えたり、お部屋の中でキョロキョロしたり。
それはね、あなたの声がほしい、とか、ここにいるって知らせてほしい、とか、っていう、わたしなりのサインなんだよ。
歳をとるって、こういうことなんだなって、わたしも最近になってやっとわかってきたの。
でもね、見えにくくなっても、聞こえにくくなっても、わたしの心は何も変わってないんだよね。あなたが好き、そばにいたいって気持ちは、むしろ前よりずっと強くなってるの。
だから、もしあなたの大切なシニアの子が、前より甘えるようになったなって思ったら、それはわたしと同じ世界を感じてるサインかもしれない。そのときは、どうか気づいてあげてね。優しく声をかけて、そばにいてあげて。
わたしたちは、あなたの声と手と心に、支えられてるんだから。
不安って、目に見えないけど心の中でふくらんでいくんだ

あなた、不安ってどんな感じか知ってる?
わたしね、前までは不安ってあまり感じたことがなかったの。いつもの道を歩いて、いつものお家に帰って、いつものごはんを食べて、パパとお昼寝して、そんな日々があたりまえだと思ってたの。
でもね、あるときから、そういういつも通りがちょっとだけ変わってきたんだ。
いつもの場所にあるはずのクッションが見えなくて、思わず躓いちゃったとき、とかね、ママが声をかけてくれてたのに気づかなくて、怒ってないのに悲しそうな顔をさせちゃったときとかね。
そのひとつひとつが、わたしの心の中に、じわじわと不安を積み上げていったの。
たとえばね、あなたがふと気配を消してお部屋からいなくなっちゃうとするでしょ?前なら、きっとキッチンだな、とか、トイレかな、って思えたのに、今はね、どこに行ったのかがわからなくなっちゃうの。
姿も見えないし、音も聞こえない。その瞬間、わたしの心の中にぽつんとした寂しさが広がるの。そしてその寂しさは、だんだん不安に変わっていくの。
「もしかして、わたしを置いてどこかに行っちゃったのかな」
「ママ、怒ってるのかな」
「また一人になっちゃうのかな」
そんなふうに思い始めると、わたし、動けなくなっちゃうの。頭の中がぐるぐるして、胸の奥がぎゅうってなる感じ。
あなたに伝えたくても、うまく伝えられなくて、ついクンクン泣いちゃったり、あなたのあとをついて歩いたり、ずっと見つめちゃったりするの。
これってね、わがままなんじゃないの。置いていかないで、って、そばにいてねって、ただそれだけの気持ちなの。
人間の言葉が使えたら、もっとちゃんと伝えられるのにね。
でも、わたしたちシニア犬は、行動でしか伝えることができないの。だから、いつもとちがう行動が増えたときは、そこに私たちの気持ちが隠れているって、あなたに知っておいてほしいの。
それからね、わたし、最近よく寝ぼけちゃうのよね。
夢なのか現実なのかわからなくなる瞬間があって、夜中にふいに起きて歩き回っちゃうこともあるの。それでママが心配して声をかけてくれると、ほっとしてすぐにまた眠れるの。
あなたの声って、不思議とね、わたしの心にまっすぐ届くんだよ。たとえ耳が聞こえにくくなっても、心で感じられるんだ。「リア、大丈夫だよ」って言われると、「うん、わたし大丈夫」って思えるの。
シニアになるとね、体の衰えだけじゃなくて、心も揺れやすくなるんだ。でも、その心の揺れをちゃんと受け止めてもらえると、わたしはまた安心できる。
不安って、目に見えないけど、あなたには見つけてほしいの。あなたの目と耳と心で、わたしの気持ちに気づいてほしいの。だって、わたしの安心は、あなたのそばにあるんだから。
わたし、なんでこんなに甘えたくなるんだろう?

あなた、最近のわたしのこと、また甘えてきたなあ、って思ったこと、あるでしょ?
ママにも言われたの。「リア、前よりずっと甘えん坊になったね」って。でもね、わたし、自分でもびっくりしてるの。どうしてこんなにあなたのそばにいたくなっちゃうんだろう?って。
前はね、少し離れていても安心だったの。ママがリビングにいて、わたしがキッチンマットの上でお昼寝してる、そんな距離感がちょうどよかったの。でも今は、そのちょっとの距離が、ものすごく遠く感じるんだよ。
見えにくいし、聞こえにくいから、あなたの姿や声をちゃんと確認できないだけで、胸の奥がそわそわしちゃうの。
不安が心の中に住みつくようになってから、わたしは「ひとりでいる」ってことが、ちょっとだけ苦手になっちゃった。
だから、気づくとママの足元にくっついてたり、パパのベッドに先回りして寝てたりするの。それはね、ただ甘えたいっていうより、安心していたいっていう気持ちのほうが近いかな。
あなたのそばはね、私たちの安心がある場所なの。あなたがいるだけで、わたしの心の中のざわざわがすうっと落ち着いていくんだよ。ぴったりくっついていたいのは、その安心を感じていたいからなんだ。
キャバリアって、もともと甘えん坊な性格って言われてるけど、わたしみたいにシニアになると、その甘え方がちょっと変わってくるの。
前は、遊んでー!って元気いっぱいに寄っていってたけど、今はもっと静かに、静かに、そばにいさせてほしいな、って寄り添う感じ。
寝るときもそう。あなたがいると、わたし、安心して眠れるの。呼吸の音が聞こえるだけで、夢の中でも大丈夫だって思えるの。
あなた、わたしが甘えてくるとき、困ったなぁって思っちゃうこともあるかもしれないね。でもね、それはわたしがあなたを心から信じてる証なの。心が弱くなったとき、あなたの強さに触れたくなるの。それがわたしなりの甘えなんだよね。
わたしね、本当はちょっと強がりだったの。
ひとりでもお留守番できるし、知らない場所だって平気な顔してた。でも今は、素直に「さみしい」って言えるようになったの。それはきっと、あなたがいつも受け止めてくれるって信じられるようになったからなんだ。
だからね、あなたのそばにいたいって思うのは、愛情のしるし。甘えん坊になったわたしを、ちょっとだけ誇りに思ってくれたらうれしいな。わたし、あなたが大好きで、あなたがいれば大丈夫って思ってるから。
ママがしてくれてる、安心する工夫たち

わたしがね、見えにくくなったり、聞こえにくくなったりしてから、ママはいろんなことに気づいてくれたの。そしてね、わたしが少しでも安心できるようにって、たくさんの工夫をしてくれるようになったのよ。
たとえばね、お部屋の模様替えをしないようにしてくれたの。わたし、見えづらくなってからは、ちょっとの変化でも戸惑っちゃうようになってね。
クッションの位置が変わっただけで、あれ?ここに何かあったっけ?、って足を止めちゃったり、躓いたりするの。
でも、ママはリアが安心して歩けるようにって、家具の配置をずっと変えずにいてくれてるの。それだけで、わたしの毎日はすごく歩きやすくて、気持ちも落ち着いているのよ。
それからね、床に滑り止めのマットをたくさん敷いてくれたの。足元がおぼつかないときでも、ふわっと受け止めてくれる感じがして、安心して歩けるんだよ。
ママはこれでリアが転ばなくてすむねってにっこりしてたけど、わたしにとってはその優しさがすごく嬉しかったの。
音が聞こえにくくなってきてからは、ママの声も時々遠く感じるようになったの。でもママは、わたしの目の前にしゃがんで、顔を見せてからゆっくり話しかけてくれるの。
口の動き、表情、手のジェスチャー、全部が合わさって、ママの言いたいことが伝わってくるんだ。
ある日、ママがわたしのほうに来る前に、足で床をトントンって軽く踏んだの。
わたし、それでママが来るのに気づいたのよ。振動で存在を感じられるなんて、わたし知らなかったの。それ以来、ママはときどき床を踏んでここにいるよって教えてくれるの。ね、すてきな工夫でしょう?
そしてね、わたしが夜中にそわそわしちゃうときも、ママは起きて声をかけてくれるの。リア、だいじょうぶよ。ママここにいるよって。
その声を聞くと、わたし、すっと眠れるの。ただそばにいてくれるだけで、不安が溶けていくのが自分でもわかるんだよね。
あとね、ママは脳にも刺激が必要よねって言って、かんたんなゲームをしてくれるようになったの。おやつをタオルの中に隠して探してごらんって。その時間がね、すっごく楽しいのよ。
見えにくくても、においをたどって見つけたときの、やった!って気持ち、ちゃんとあるの。
それから、ごはんの時間も毎日同じにしてくれてるの。決まった時間に決まった場所でいただきますってすると、身体も心もほっとするんだ。今日もいつもどおりがあるって、本当に安心なのよ。
わたしが何も言えなくても、ママはわたしの小さな変化に気づいて、優しい工夫をしてくれてるの。それって、きっと見えない愛情っていうものなんだと思うんだよね。
あなたにも、きっとできることがあると思う。今、あなたのそばにいる子がわたしと同じように甘えてきたり、そわそわしていたら、どうか気づいてあげてね。ちょっとした工夫で、わたしたちの心はすごく楽になるのよね。
わたしたち、あなたの優しさをいつもちゃんと感じてるんだよ。
あなたのそばのシニア犬さんもわたしと同じ気持ちかもしれないね

ねえ、ここまでわたしの話、聞いてくれてありがとう。こんなふうに、ゆっくりと自分の気持ちを伝えられること、すごく嬉しかった。
でもね、わたしの話は、きっと特別なことじゃないと思うの。だって、わたしのように年を重ねて、見えにくくなったり、聞こえにくくなったりしてるお友達は、他にもたくさんいるから。
あなたのそばにいるその子も、きっと、少しずつ世界の変化を感じながら、心の奥で、どうしようかな、がんばろうかなって思ってるかもしれない。
わたしがそうだったように、何かがうまくいかないとき、不安とか、さみしさとか、ちょっとした混乱みたいなものが、ふと湧いてきてしまうの。
でもね、そんなときでも、あなたがそばにいてくれるだけで、その子は安心できるはずなの。
わたしたちシニア犬はね、もう若い頃のように走り回ったり、新しいことにどんどん挑戦したりはできないけれど、そのぶん、あなたのことをもっと深く、もっとやさしく見つめることができるようになったの。
だからこそね、あなたの声、あなたの手、あなたの時間が、なによりも大切な宝物に感じられるんだよ。
最近甘えるようになったなって思ったとき、それはその子からの小さなサイン。
「わたし、ちょっとこわいの」
「ちょっとだけ頼らせて」
「そばにいてくれるとうれしいな」
そういう気持ちが、言葉の代わりに行動にあらわれているだけなのよ。あなたがもし、どう接したらいいかわからないなって戸惑ったとしても、大丈夫。
わたしたちは、完璧な対応を求めているわけじゃないの。ただ、気持ちに寄り添ってほしいだけなんだよ。見てくれている、わかろうとしてくれている、って感じられるだけで、心がすっと軽くなるんだよね。
たとえばね、手を添えてくれるとか、名前を呼んでくれるとか、眠る前におやすみって言ってくれるとかね。そんな日々のなかの、ほんの小さなことが、わたしたちにとっては何よりの安心なの。
だからね、どうか自分を責めたり、もっとこうすればよかったなんて思わないでも大丈夫なんだよね。あなたがそこにいること、それだけで、わたしたちは本当に幸せなんだから。
あなたのそばにいるあの子も、わたしと同じように、目には見えないたくさんの気持ちを抱えているかもしれない。
でも、その気持ちはきっと、あなたになら届くと思うんだ。だって、あなたはその子のいちばんの理解者であり、安心の場所なんだから。
このお話を聞いてくれたあなたが、今夜その子をそっと抱きしめてくれたら、わたし、とっても嬉しいな。
リアより


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