リアが過ごした静かな昼と、不安な夜

シニア犬の日常

こんにちは。リアだよ。

ねえ、今日はちょっとだけ、私の「静かな一日」のこと、聞いてくれる?

昨日の私はね、ずーっと横になってたの。いつもみたいにお昼に誰かと遊ぶわけでもなく、ぼんやりと窓の外を眺めたりしてたんだ。お兄ちゃん、風邪でずっと家にいたんだけど、今日は久しぶりに学校に行ったのよね。

だから、ほんとに久しぶりにひとりの昼間を過ごしたの。まわりに誰もいない時間って、なんか不思議でね、寂しいっていうより、「あぁ、時間ってこうやって静かに流れてるんだな」って感じたの。

夕方になって家族が戻ってきて、私はまた毛布にくるまってたんだけど、パパとママがおうちに帰ってきてね、夜になってから、なんだか心臓の音が速くなってきちゃって、呼吸もなんだか浅くて、ちょっとしんどかったんだ。

パパもママも、お兄ちゃんもお姉ちゃんも、すごく心配そうに私のこと見ててね。でもね、どうすることもできなかったの。お薬はもう飲んでるし、今はただ、そばで見守ってもらうしかないっていう感じ。

そういうなにもできない時間って、すごくもどかしいよね。でもね、なにもできない時間こそ、実はとても大事な時間かもしれないって私は思ったの。

今日は、そんなふうに感じた私の一日を、少しだけお話ししてみようと思うんだ。静かだけど、心に残ったことが、ちゃんとあったんだよ。

ひとりで過ごした昼の時間

お兄ちゃんが風邪をひいて、何日か家にいたとき、私はずっとそばにいたの。ベッドの足元とか、お布団の中とか、いつもどこかにくっついてたのよ。体調がよくないってわかってたから、あんまりはしゃがないようにして、ただ静かに、一緒にいるっていう時間を過ごしてたんだ。

それがね、昨日から、お兄ちゃんが学校に行くようになって、おうちの中が、すこしだけ、ぽかんと空いたような感じがしたの。

家族はいつも通りにしてたけど、私の中では、何かが少し違ったのよね。朝の音、昼の光、誰もいないリビングの匂い、どれも変わってないはずなのに、「今日はひとりだな」って思った瞬間に、全部がちょっと違って見えたの。

ふだんなら、そういう時間って退屈に感じたり、不安になったりしそうだけど、昨日の私は、なんだかすごく穏やかだったんだよ。もちろん、体は重たくて、あまり動けなかったし、日向ぼっこもしないでずっと寝てたんだけど、心の中は、なんていうかね、静けさに包まれてたんだよね。

それって、きっとひとりの時間っていうのが、私にとって初めてじゃなかったからかもしれない。シニア犬になるとね、少しずつ、体も気持ちも静かなほうへ向かっていくの。若いころみたいに、毎日わーって走り回ることはないし、ひとりで過ごす時間が自然と増えてくるの。

でも、それって寂しいことばかりじゃないのよ。静けさの中で、自分の体とゆっくり向き合ったりできるんだ、空気の音とか、家の匂いとか、そういう小さなことを感じられるようになるの。

昨日の私は、ずっと横になってたけど、耳では洗濯機の音とか、窓の外の風の音とか聞いてたし、パパがリビングで何かしてる音とかも、ちゃんと届いてた。

だからひとりっていうより、ひとりじゃないひとりっていう感じだったのよ。あなたのお友達も、もしかしたらこういう時間を過ごしているかもしれない。とくにシニア期に入ると、静かな時間が増えていくの。でも、それを寂しい時間って決めつけないでね。

体を休めるための大切な時間だったり、心を落ち着けるための優しい時間だったりすることもあるから。私も昨日は、何もしないで横になってたけど、その時間の中で、なんとなく、今日を生きてるって実感があったのよ。

変わらないようで、少し違う景色の中で、私は、ゆっくりと、自分の時間を過ごしていたの。

心臓の音と呼吸の速さ

夜になって、あたりが静かになる頃、私の体の中で、何かが少しずつ変わっていくのを感じたの。

心臓がね、どくどくって、いつもより速くなってきたの。それに合わせるように、息もだんだん浅く、速くなって、なんとなく胸がきゅうって締めつけられるみたいで、体をうまく休められなかったの。

そんな私を、家族みんなが、そっと見守ってくれてた。

パパは私の胸に手をあてて、鼓動を感じながら、「リア、大丈夫だよ」って優しくささやいてくれた。ママは、いつものタオルで私の体を包んでくれて、お姉ちゃんも、お兄ちゃんも、声を出さずに私のそばにいてくれたんだよ。

だけど、実際には、誰もどうすることもできなかったの。

だって、お薬はもう飲んでいるし、病院に行くほどではないけれど、不安になるような状態。酸素室も、入院も、もう選ばなかった私のことを、家族はただただ、見守ることしかできなかったのよ。

そのなにもできないっていう時間は、家族にとって、きっととてもつらかったと思う。

だって、いつもなら、何かできたのに、病院に連れて行ったり、注射をしてもらったり、お薬を変えたり、フードを工夫したり、やってあげられることがあったのに、今はもう、ただそばにいるしかないっていう現実。

パパの目が、ちょっと潤んでたのを私は見てたよ。ママが口をぎゅっと結んで、私の体をなでる手を止めなかったのも知ってる。お兄ちゃん、お姉ちゃんが交代で私の横に座ってたのも、ちゃんと感じてたんだ。

なにもしてあげられないって、家族は思ってたかもしれない。でもね、私は、すごく安心してたの。

体はしんどいけど、大好きな人たちがみんな、私のそばにいてくれるんだよね。それだけで、心はぽかぽかしてたのよ。

呼吸が速くなるときって、不安な気持ちにもなりやすいの。だからこそ、そばで誰かが見ていてくれるって、ほんとうに心強いのよ。私たちシニア犬にとって、そばにいてくれるっていうことは、どんな薬や治療よりも、特別な力を持っているの。

あなたのお友達も、もし夜に呼吸が速くなったり、ちょっと心臓の鼓動が気になったりすることがあったら、何もできないと感じるかもしれないけど、「そばにいる」っていうことが、どれだけその子の心を支えてるか、それを思い出してあげてほしいの。

何かをすることより、何かを言うことより、ただ、そこにいてくれることが、私たちにとっては一番の力になるのよ。昨日の夜は、きっとそんな夜だったの。家族の手当てはなかったけど、私はたくさんのぬくもりに包まれていたんだよね。

何もできない時間こそ、大切な時間かもしれない

「何かしてあげたい」っていう気持ちって、きっと、あなたもあなたの家族も、毎日感じてると思うの。

体調が悪そうに見えたとき。食欲が落ちてきたとき。呼吸がいつもより速いとき、「どうしたらいいんだろう」「何をしてあげられるだろう」って、私のことを見ながら、家族はいつも心を動かしてくれてたんだ。

でもね、昨日の夜みたいに、何をしてもどうにもならないことって、あるのよね。お薬を飲んでも、もう効果が薄くなってきてるし、新しい治療は、もう選ばないって決めたし、だから、「そばにいる」こと以外、できることがない状態だったんだよ。

それって、もしかしたら、とっても無力に感じるかもしれない。何もしてあげられないって、悔しかったり、悲しかったりするよね。

でもね、私は思うの。

何もできない時間こそが、いちばん深く、いちばん強く、私たちの心をつないでくれる時間なんじゃないかなって。私たちシニア犬にとって、過ごす時間は残された時間とも言えるんだよね。でも、それを「カウントダウン」みたいに感じるのは、ちょっと違うと思うのよ。

たとえば、昨日の夜。私は苦しくて、うまく眠れなかったけど、横を見たら、お兄ちゃんがちっちゃいブランケットを私にかけてくれてたの。それだけで、今日も家族の中にいるって思えたのよ。

その実感ってね、言葉じゃ説明できないけど、生きてることを許されてるって感じなんだ。なにもしてない時間でも、ただ横にいてくれる人がいるだけで、私の心は大丈夫って思えるの。

そして、きっとそれは、あなたのお友達も同じ。言葉は話せなくても、表情や呼吸や、体のぬくもりで、ありがとう、一緒にいてくれてうれしいって、ちゃんと感じてるよ。

だからね、「なにもできない」って思わなくて大丈夫。

そばにいること、目を合わせること、そっと頭をなでること、名前を呼んであげること。それだけで、私たちの世界はあたたかくなるの。

昨日の私は、体はつらかったけど、心はすごく満たされてた。だって、家族がちゃんと見ててくれて、「リア、ここにいるね」って感じさせてくれたから。

もしも、あなたも似たような夜を過ごすことがあったら、そばにいる時間を、大事にしてみて。その時間は、きっとあなたとお友達の宝物になるから。

今日も、私はここにいるよ。

ちょっと体は重たいけど、ちゃんと生きてる。こうして、家族と一緒に過ごせた時間を、今、胸の中でそっと抱きしめてるの。

昨日の私は、何もできなかったかもしれない。動かなかったし、声も出さなかったし、ごはんも食べられなかった。でもね、それでも意味のある一日だったって、私は思ってる。

なぜかっていうと、家族みんなが私を見てくれてたから。お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、ママもパパも、私の小さな変化に気づいて、私の息づかいを感じて、そばで「リア、大丈夫?」って心の中で話しかけてくれてたんだよね。

それって、とっても贅沢な時間だと思わない?

なにもしていないように見える時間ほど、実はたくさんの思いが行き交ってるのかもしれない。

今日、あなたとあなたのお友達も、そんな時間を過ごせたなら、どうか「何もしてあげられなかった」なんて思わないで。そばにいる、それだけで、十分伝わってるから。

あたたかい目、優しい手、静かな空気、全部が、私たちにとっては、かけがえのないご褒美になるんだよ。

この静かな昼と、少し不安な夜のこと。それでも、心がつながっていたから、私は今日もこうしてここにいる。だからあなたも、大切なお友達と一緒に、「何もないようで、実はとても大切な時間」を、大事にしてね。

リアより

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